寝たきりで胃ろうによる栄養摂取をされているAさん。ある日大声で怒っていました。
「コーラが飲みたいんや、持ってこい!」
コーラが好物で、以前は毎日飲んでいたと話してくれたことがありました。だからその気持ちが痛いほどわかりました。
医師からは経口摂取を止められています。でも…
なんとかしてあげたい、Aさんに味わう喜びを感じてもらいたい…。Aさんの看護をするスタッフの気持ちはみな同じでした。
1人のスタッフが提案しました。「綿にコーラを含ませて、舌にのせて味わってもらったらどうだろう」
私たちはすぐに医師の許可を取りコーラを用意しました。
「Aさん、舌に綿をのせますよ。何の味がするか教えてくださいね」
Aさんはすぐに気づいてくれました。
「コーラや、うまい…」涙を浮かべていました。
私もつられて涙ぐんでしまいました。Aさんは数年後亡くなられましたが、きっと天国でコーラをごくごく飲んでいることでしょう。
鵜飼優子(担当:医療的ケア)