モーニングケアの時間、ひどく暴れて職員のケアに抵抗している利用者さんがいました。
私は、その利用者さんの朝食介助に入ることになりました。
不機嫌な彼女は、外国人の私の食事介助に、真一文字に口を閉じています。
片言の英語で、彼女に声をかけたその時、彼女は私の手をつかみ親指の爪を立てました。

私の脳裏に、朝の光景が浮かびました。彼女には怒る理由がある…。
『今朝のことで腹が立っているんですね。辛かったんですね』
英語の話せない私は心の中で思い、彼女の背中や大腿部を優しく撫でることしかできませんでした。

すると、彼女は私の顔を眺めながら、立てていた爪を外し、外国人の私の介助する朝食を全部食べて下さいました。
言葉は通じなくても思いは通じると確信した瞬間でした。

昼食の様子はというと、職員が食事介助していましたが、食べられませんでした。

海外研修で、認知症のある方のフロアーでの体験です。

大窪明美(担当:介護過程Ⅲ)